『永遠の終わる日』
少女は待っていた。
漆黒の衣に身を包み、小さな体に不似合いなほどの大きな鎌を持ち
永遠を、永遠の終わりを待っていた。
§
彼は戦っていた。
誰が始めたのかも、何の為に始まったのかも分からない戦争の中で。
一人、二人、三人…たくさん、たくさん殺した。
一人、二人、三人…たくさん、たくさん殺された。
でも、戦争は終わらなかった。
だから彼も、戦うのを止めなかった。
一人、二人、三人…たくさん、たくさん死んだ。
彼の番が来た。
気づいたときにはもう、どうしようもなかった。
何発もの、小さな小さな銃弾が彼を抉った。
銃声、爆発、破壊、悲鳴、その他諸々。奏でられるBGM。
スイッチを切ったかのように、ぷつりと止んだ。
大空、草木、火炎、黒煙、その他諸々。彩られる風景画。
塗りつぶされたかのように、黒く黒く染まった。
§
暗闇に、一筋の光が射した。
静寂は、叫ぶような泣き声にかき消された。
真っ暗な世界に、真っ白な天井が映し出された。
それは、人が最後の最後で見る、走馬灯という名の映画。
§
病院の一室で、祝福されて生まれた。
厳格な父と、優しい母の元で育った。
悪友、親友、たくさんの友と遊んだ。
勤勉な教師の元で学んだ。
すれ違った少女に、恋をした。
戦争が始まって、何も分からないまま戦った。
殺されないためだけに、大勢を殺した。
命令されるがままに、破壊した。
そして…
小さな小さな銃弾が、何度も何度も彼を抉る。
音が止み、世界が暗闇に閉ざされる。
一筋の光が射した。
生まれた。
育った。
遊んだ。
学んだ。
恋をした。
戦った。
殺した。
破壊した。
そして…
生まれ、育ち、遊び、学び、恋をし、戦い、殺し、破壊し、そして…
生まれ、育ち、遊び、学び、恋をし、戦い、殺し、破壊し、そして…
生まれ、育ち、遊び、学び、恋をし、戦い、殺し、破壊し、そして…
§
そして…
§
少女は待っている。
漆黒の衣に身を包み、小さな体に不似合いなほどの大きな鎌を持ち
永遠を、永遠の終わりを待っている。
仕事が終わる日を願いながら。
2003.8.11 作:藁人形